ー 獣医師を目指した理由は?

 私は北海道の田舎で生まれ育ち、子供の時から周りの環境に動物がいることが当たり前の生活を送ってきました。そのため、自然と動物の体の仕組みや微生物に興味を持つようになり、獣医を志すようになりました。ただ当時は馬の獣医師になりたいとかはなく、むしろ馬が苦手なくらいで(笑)研究者か小動物臨床の獣医師になりたいと思っていました。

ー馬業界に進むことになってきっかけは?

 興味を持ち出した一番の出来事は、東京競馬場で実際に競馬を観戦したことです。競馬場に行くまでは馬が本気で走っている姿を実際に見たことがありませんでした。それを見られるのは競馬場ならではですからね!私は大学に入学してから友人に連れられて初めて東京競馬場に行き、馬の走る姿に魅了されました。それから獣医学を駆使すれば競馬で儲けられるのではないか、と思うようになり馬の獣医学を勉強し始めました。そして、実習などを通して馬の臨床医や競馬業界で働きたいと強く思うようになりました。ただ、獣医学を勉強しても馬券の方は当たるようにはなりませんでした(笑)

ー人生の方向性を変えた、馬の魅力とは?

 ありきたりかもしれませんが、走っている時の美しさやカッコ良さ、そして、何もしていない時の可愛さなどですね。賭けなくても良いので、実際に競馬場へ行って競馬を見るとわかると思います。中央競馬でも地方競馬でも良いので是非”馬が走っている”競馬場へ行ってみて欲しいです。

ー 数ある馬業界の中から、JRAに就職した理由は?

私は競馬を見るのが大好きだったので、それに携われる仕事がしたいと考えていました。JRAの施設であるトレーニング・センターでは、現役の競走馬が臨戦態勢の状態で入厩してくるため、そういったレース間近の競走馬と関わりながら仕事ができることは魅力でした。JRAの獣医師は臨床医としてだけではなく、レースの公正確保の一旦も担っています。裏方仕事に当たるかもしれませんが競馬を陰で支えているという響きがカッコ良く感じました。あとは、獣医師が多く在籍しているので先輩から学べる環境が整っていることも志望した理由の1つです。

ー 公正確保というのは?

競馬は賭け事なので薬を使用したドーピングはもちろんのこと、怪我をしている競走馬を走らせないようにチェックをしています。賭ける人が賭けたくなくなるような、信頼を失くすような状態でレースを実施しないように注意しています。そういった不正行為を獣医師が監視する役割を担っており、また、治療する際にも気をつけなければならないということがJRA獣医師の特徴かなと考えています。公正確保のため,出走馬に対しては、限られた薬の中でしか治療出来ないというのは、JRA獣医師の難しさでもあり面白さでもあります。

 ー 2.JRAを就活する上での基本情報 ー

ここで一度JRAがどういった組織なのか、そして就活の概要について整理してみましょう。

・JRAは ” 特殊法人 ”

 JRAは政府(農林水産省)監督の特殊法人です。特殊法人は、JRAの他にNHKが有名です。競馬法に基づき、日本における競馬(中央競馬)を実施することができる唯一の組織です。ちなみに、地方競馬は地方公共団体が主催している競馬です。

・一般的な就活は新卒のみ

 JRAの獣医職は現在のところ新卒の募集しかありません。獣医師免許を持つ院卒(博士課程)の方の募集も検討しています。

・入会1年目はトレーニング・センターに配属されることが多い

 トレーニング・センター(トレセン)というのは競走馬の調教や管理を行う施設です。JRAのトレセンは美浦(茨城県)と栗東(滋賀県)の2ヶ所あり、新卒で入会した後、1年目はどちらかのトセンに配属されることが多いです。

・転勤と出張が多い

 獣医職は総合職として採用され、全国の事業所に配属されるので転勤が多いです。また、土日や祝日の競馬開催業務があるので出張もあります。

・獣医職の他にも事務職と技術職(建築・設備・土木)がある

 JRAは他の職種の方も同期になるので、相談できるような友達もできますし、出会いもあると思います。競馬が好きな人が多いので、競馬に関して熱く語り合うことや自分が知らないことを教えてくれる学びもあるので、競馬が好きな人にとっては良い環境だと個人的には思います。

・臨床・研究・事務・防疫など様々な経験

 臨床はもちろんのこと、JRAには競走馬の研究施設もあるので、そのような研究機関に配属される可能性もあります。また、本部(六本木)での勤務や防疫に携わる仕事もあるため、裏を返せば多様な仕事をこなす能力が求められます。

・待遇

 JRAのリクルートサイトに募集概要が掲載されているので確認してみると良いと思います。

3.ー JRA獣医師の就職 ー

 今回の記事を見ている方は、特にJRAの就活について聞きたいという人が多いと思います。

JRAの獣医職の概要は上述した限りですが、実際に私が体験した就活に関して話したいと思います。

 まず、JRAの獣医職に採用されるには ” ツテ ” や ” コネ ” が必要なのかどうかについて、私の考えを述べたいと思います。

私は、大学入学時には全く馬に興味もなく馬臨床に進もうとも思っておらず、馬術部にも入りませんでした。よく就活していて聞くのが、” JRAはツテがなければ入ることは難しい ” ということです。しかし、私は全くそうは思いません。なぜなら、私はツテもコネもなかったからです。

私の実家は米農家ですし、親戚で獣医師になっている人もいなければ馬関係で仕事をしている人もいません。” ツテ ” や ” コネ ” というのは必要ではなく、就職活動をする上で、その企業の特性や就職試験に関して情報を収集することが必要になるのではないかと思います。

そういった意味での ” ツテ ” や ” コネ ” が必要と噂されているのかもしれないですが、それに関して言えば自分の努力や勇気でどうにかなるものなのだと思います。 就活する上で、情報を収集する姿勢が必要になるのはどこの企業でも同じです。獣医学生の就活にとっては、あまり重要視されない部分かもしれないので、そのように言われているのかもしれません。

しかし、大手企業によっては学歴が重要になったり、研究室のOBやOGの方が直接採用活動をしに研究室に来たりすることがあると聞きます。そういった意味では、少なくともJRAの獣医職に関して言えば全くそのようなことはありませんでした。

 次によく聞かれることとして、実習へ行った方が良いかどうかです。結論から言うと、実習には行ったほうが良いです。 それは、”ツテ” や ”コネ”を作るためというよりは、自分自身のためです。よくあるのは、就職後に職場の環境が自分の思っていた環境と違った、ということです。その点については、獣医業界には学生が比較的簡単に行動に移すことができる”実習”という制度があるのでそれを利用する手はないと思います。自分に合った職場かどうかを判断するためにも、気になっている、あるいは就職を考えている企業や病院には一度でも実習へ行った方が良いですね。私自身、JRAの実習には2度参加させて頂きました。中にはもっと多く実習に行った方もいれば、一度も行ったことがないという職員の方もいるかと思います。相手側からすれば、採用活動の際にその学生が実習に来た時にどういう学生だったのかを手掛かりにすることはあると思いますが、その評価が絶対ではありませんし、実習に行ったからといって良い印象を残せるかはまた別の話です。 就活する上でどちらが有利か不利かは断言することは出来ませんが、自分にとっては間違いなく実習に参加する方がその職場の雰囲気や労働環境を知る事が出来るため、行けるのであれば行くべきだと私は思っています。

最後に、獣医学生は実習やインターンなどを活用して、低学年から様々な研修先を経験することにより職種の視野が広がるので、十分に活用するべきだと思います。

特に馬業界への就活では、企業や牧場のホームページやリクルートサイトにアクセスして、研修機会を模索することが大事だと思います。私自身、それに気がつくのが遅かったため、就活する上でなぜこの仕事を目指したのか、理由を明確に答えられない時期がありました。そういったことから開放されるためにも、経験を積むという意味で実習に参加することは非常に有意義だと思います。 待遇や労働環境に関しても実習に行く事で理解しやすいと思います。また、実習に行き、就活期間について質問をすることで、他の企業と併願が出来るのかどうかを把握する事もできます。未知な部分が多いからこそ、実習へ行く意義が非常に大きくなるため、一度でも実習に参加する事をお勧めします。